講習会の記録

URADOCPDS>苫道安全協議連絡会が企画運営するCPDSプログラム>

北海道土木技術会 トンネル研究委員会 室蘭地区 トンネル勉強会
初のトンネル解体に挑む! ~還暦に解体する在来工法のトンネルからの知見~


 発表者:㈱高橋建設 本田 幸生


20151023公開

PowerPoint PAGE-01

高橋建設の本田です。
このような場所で話す機会が無い為、緊張していますが、 頑張って説明していきたいと思います。

PowerPoint PAGE-02

トンネル取壊しの説明の前に、既存トンネルの背景はというと、老朽化が進み長寿命化が求められています。
国交省では老朽化対策として①老朽化対策施策策定の義務化②5年/回の近接目視、計画的な修繕とメンテナンスサイクルが定められました。

自治体も同様の対策義務化となり今後益々補修技術が求められそうです。

PowerPoint PAGE-03

現時点での開発局直轄トンネルで見てみると約260本が供用されており内約140本と50%のトンネルが在来工法で施工され現役で使用されています。

★(クリック)

この先も供用は続くため、補修計画及び補修工事は必要不可欠です。

昨年度当社受注工事の中に、ウエンベツトンネル解体工事があり、
今後の補修工事に当社内として役立てないかと思い、調査を行いました。
素人の調査なので、このような場所で報告する資料ではないかもしれませんが、
お許しください。

PowerPoint PAGE-04

取壊しの説明に入りたいと思います。
ウエンベツトンネルは、壮瞥町上久保内にあり、R453の新ルート内にあります。
新ルートは、旧国鉄路線を利用している為、ウエンベツトンネルが支障となり、取り壊す事となりました。

PowerPoint PAGE-05

ここでウエンベツトンネルが生まれた背景を紹介します。
胆振縦貫鉄道が1940年開業し、後京極線と合わせて1944年に胆振線となり伊達紋別から倶知安間83Kmが運行を始めました。
このことからウエンベツトンネルは1940年に完成し供用したものと思われます。
写真にありますが、トンネル履歴板には昭和30年1月竣工とあることから開業から15年間は素掘りで供用されそのあと何かの理由でコンクリート覆工されたものと推察されます。
コンクリート覆工は総延長の半分程で残りは素掘りのまま利用されていたようです。

PowerPoint PAGE-06

工事箇所の着工前の全景です。
ほぼ中央の白っぽく見えているのがコンクリートで閉鎖されたウエンベツトンネル坑口です。

切土のラインになります。

PowerPoint PAGE-07

ウエンベツトンネルの諸元ですが、総延長がL=80mで内空が19.2㎡です。
トンネルの詳細は
1940年(昭和15年)12月 L=80mの素掘りトンネルが完成?
1955年(昭和30年)1月 伊達側坑口からL=33.90mのコンクリート覆工完成
1968年(昭和43年)11月 42.20mの小ブロック覆工と大滝坑口3.90mのコンクリート覆工が完成
1986年(昭和61年)11月 廃線、両坑口閉鎖
2014年(平成26年)10月 解体

まとめますとアーチ部コンクリート覆工部は供用期間が31年間プラス閉鎖期間が28年間で59年間。
アーチ部ブロック覆工部は46年間を経た構造物の詳細を観察することになります。

PowerPoint PAGE-08

この図はトンネル状のボーリング柱状図から想定した地質縦断図です。

起点側(大滝坑口)SP=10mではコンクリート背面から1.7mが自破砕安山岩でRQD16%、その上部5.2mが凝灰角礫岩で風化・変質を呈したRQD13%で上部0.5mが砂質土、表土からなる地表となる。

終点側(伊達坑口)ですがSP=70mではコンクリート背面から3.7mが玉石混じり砂礫で安山岩が玉石状に含み90%以上が玉石よりなる。その上部から地表までが5.5m火山灰質礫混じり砂、火山灰、軽石質火山灰、表土からなっている。

地質境界点がSP=48m付近で地質境界点からトンネル終点までが32mで全断面コンクリート覆工延長が33.9mと安全を考慮すると巻き立て工法境界の判断は当時の(60年前)優れた技術を感じられました。

PowerPoint PAGE-09

閉鎖コンクリートを壊し内部を観察しましたが、トンネルアーチのブロック部も整然と残っており、60年の歳月を経たとは思えない、安定した構造が保たれた状況でした。
内空断面ですが高さが5.0m、下幅3.6m、アーチ部変化点の幅が4.6mです。

PowerPoint PAGE-10

トンネル内の状況ですが、

左上はアーチ部のブロックとコンクリート覆工の境界部の状況写真です。 ブロック部は全く劣化が見られず漏水の痕も見られなかった。コンクリート部は一か所にジャンカが、外に漏水の痕が見られたが当時のコンクリートとしては 健全と判断して良いのではと感じました。

右上の写真がジャンカの状況ですがこの程度のものは当時であれば良く見られたと思います。

中央下の写真は側壁です。ひび割れ等も見られずとても60年が経過したコンクリートには見えませんでした。

PowerPoint PAGE-11

トンネルの取り壊しに先だって内部に土砂を詰めました。

写真は小型ブルドーザーによる土砂詰め作業状況とアーチ部まで填充された状態です。

築後60年が経過したトンネルの取り壊しでもあり、切土によるトンネル上の土被りの変化に伴うアーチ部と側壁部の応力バランスの変化により、部分的に過大な応力状態が発生し、切土施工時に崩壊に至ることが懸念されました。

掘削影響検討を実施した結果、崩壊解消のため既設トンネル内を土砂詰めにより閉鎖し取り壊しを行うこととしました。

PowerPoint PAGE-12

トンネル背面近くからは背面空洞を観察するため慎重に油圧ショベルを操作し切り下げて行きました。

大滝坑口のアーチ部ブロック覆工区間には空洞は見られませんでした。

ブロックは内面が0.15m×0.15mで背面が0.17m×0.15m、厚さが0.30mで製造月日は43.11.29と読むことが出来ます。

アーチ部ブロック覆工の背面、防水シートの状況ですが46年後でも劣化、破損なく、しっかり目的を果たしているようです。 ブロックが見えている箇所は観察の為、露出させた部分です。目地には亀裂が全く見られず、右下のように製造月日もしっかり確認出来劣化も全く見られませんでした。

PowerPoint PAGE-13

アーチ部ブロック覆工の断面ですが目地もしっかり填充されており又地山とも密着していることからまだまだ現役が可能な状況です。

PowerPoint PAGE-14

一方、伊達側坑口から33.90mの区間のコンクリート巻立て区間についてもトンネル上部の背面空洞調査を行いながら油圧ショベルで切り下げアーチ部コンクリート覆工背面を露出させるべく掘削を進めていましたがコンクリート巻き厚が不足しておりバケットが軽く当たっただけでこのように穴があいてしまいました。

このような箇所では空洞があり、空洞の中で大きな落盤が発生した場合、頂部コンクリートを突き破りトンネル内への崩落も予想される状況でした。

PowerPoint PAGE-15

この写真はSP=48m付近でアーチ部ブロックとコンクリート覆工の境界部ですが、 コンクリートはおこし状でしたが背面は岩盤と密着していました。

しかし、このように密着した箇所は少なく、コンクリート覆工箇所では殆どが岩盤との密着は認められませんでした。

PowerPoint PAGE-16

側壁部の背面ですが写真でも確認出来ます通り空隙は全く見られませんでした。

背面の地質は土砂であり、よく15年間も素掘りのまま供用していたことが驚きを感じます。

PowerPoint PAGE-17

これはKP=50m付近で見られた空洞で高さが1.5m、幅が3.0mありました。

右下の写真ですが地山からはがれ落ちた土岩ですが塵が土岩を包んでおり供用時に列車走行時に振動によりはがれ落ちたものと思われます。

廃線後は振動もなく背面の状況には変化なかったように感じました。

PowerPoint PAGE-18

KP=60m付近の背面状況ですが高さ0.5m、幅が1.1mの空洞でコンクリート背面には木片も見られました。

木片の表面は腐食が進んでいるよう感じましたが芯までは腐食が進んでいませんでした。

PowerPoint PAGE-19

ここからは各部の出来形、コンクリートの状態等を紹介します。

この写真はSP=60m箇所のアーチ部の巻き厚です。 厚さは20Cmでコンクリートの状態はご覧のとおりで、天端では締め固めが不十分な状況がはっきり確認されました。

PowerPoint PAGE-20

この写真はSP=20mの右側側壁部です。厚さは30Cmでコンクリートの状況は締め固めもしっかりされ劣化も見られず健全な状態でした。

右側の写真はシュミットハンマーによるコンクリート強度測定状況です。

PowerPoint PAGE-21

覆工厚及びコンクリート強度の測定結果です。

PowerPoint PAGE-22

調査を終え知り得た事項をまとめてみました。

  これはあくまで私見なので更なる検証が必要に思いますが感じたことを羅列すると
まず、巻き立てコンクリートの強度ですが、まず経年変化による劣化はなく調査結果の数値は建設当初のものと推察しました。

故にアーチ部コンクリートは施工の困難性から在来工法のトンネルでは良質のコンクリートは期待できず、トンネル補修時はアーチ部のコンクリートへの変圧等土圧についての考察も必要ではと感じました。

側壁部については地質に問題がなければコンクリートの強度不足はないと考えて良いように思いました。故に強度不足による考慮は不要と感じました。

PowerPoint PAGE-23

アーチ部背面の空洞状況ですが、地質と掘削工法からある程度推察できるので既存トンネルの地質図から判断が可能と思いました。

又、出来てる空洞は一部に空洞内からはがれ落ちた土岩も見られましたがほこりっぽく近々に落ちたようには見えず覆工直後に落ちたように感じました。

このトンネルでは、地山状態も良かったため、上記のような健全な状態が保たれていると考えられますが、他の事例では、湧水や、不良地山に起因する地圧、背面空洞、等によりコンクリートの剥落が実際に発生していることを考えると、 ・当時、良質な施工がなされたか? ・湧水や土砂地山、破砕帯など不良地山部は劣化していると考えるべき。 ・上記のような地山では、背面空洞の有無がさらなる劣化に影響を及ぼす。 といったことは、念頭において調査や補修を計画する必要がある。 と考えます。

PowerPoint PAGE-24

観察を終え当初矢板工法での建設で多くの資料が収集出来ると期待したのですが、残念ながら当該トンネルは素掘りでの施工であったため期待した資料を得ることが出来ませんでした。 調査に当たり期待した資料として
矢板では
①損傷度、腐食の程度 ②矢板の土岩支持状況 ③矢板とアーチ部コンクリート の密着程度
支保工では
①腐食進行度 ②損傷具合 ③支保工の荷重負担具合
これらの資料収集は出来ませんでした。

結果、素掘りトンネルのコンクリート状況と背面空洞の観察のみなって事は残念ですが、まとめとしてこの解体で確認出来た事を含め一般論ではありますが、在来トンネルへの対応につてまとめました。

PowerPoint PAGE-25

観察、測定を終え新たな提案は残念ながらありませんが一般事項をまとめると
①撤去に際しては
 土被りの変化による応力バランスの変化による崩壊が懸念されること、また重機のトンネル内への転落を考慮しトンネル内への土砂填充は必要不可欠と思います。今回のトンネルは矢板工法が採用されてなかったため、支保工、矢板が使用されておらず、撤去時の最難関である支保工、矢板の取り壊し方について経験出来なかったことが残念に思います。
②閉鎖時には
 山岳トンネルの場合、背面の地質及びコンクリートの経年変化が見られなかったので空洞のまま坑口閉鎖で問題ないよう感じました。市街地トンネルは土地利用が変わるなど周辺状況の変化が考えられるため、坑内への土砂填充が必要に思います。
③補修にあたっては
 調査ではコアボーリングが行われます。ボーリング箇所選定時の配慮事項ですが今回の観察から掘削時の掘削面は地質によりそれぞれ特徴が見られるので、その変化点の両側を調査しておけばトンネルの全容を推察出来ると思います。 又、補修工事ではアーチ部コンクリートの巻き厚にむらがあり極端に薄い箇所があることも考えられるためエアモルタルの注入計画時には  圧力調整に充分な配慮が必要と思われました。背面排水管ごエアモルタル注入により閉鎖されないよう注入前に適切な計画が必要である。

一般論ですが一般的な注意事項としてまとめてみました。


PowerPoint PAGE-26

今後も、このような貴重な教材を得たときは、逃さず調査を実施し、経験を深めたいと思います。

終わりに冒頭でも述べましたが全くの素人の報告ですので観察結果を感じたまま報告致しましたが、 はたして観測の目が正確な評価をしているのか疑問もありますが、お許しいただいて報告を終わります。

PowerPoint PAGE-27

ご静聴ありがとうございました。

《関連情報》
トンネル研究委員会