講習会の記録 道路事業における環境保全について~施工中の配慮事項とモニタリング~

URADOCPDS>苫道安全協議連絡会が企画運営するCPDSプログラム>

道路事業における環境保全について~施工中の配慮事項とモニタリング~

講師:株式会社ドーコン環境保全部 中村 裕

 以下の資料は、受講者の技術研鑽に役立つことを願い、講師のご厚意により提供いただいたものです。

公開日:20150519



PowerPoint PAGE-01

株式会社ドーコン環境保全部の中村と申します。
本日は、道路事業における環境保全について~施工中の配慮事項とモニタリング~と題して、発表いたします。

PowerPoint PAGE-02

本日お話しする内容です。

はじめに、「なぜ、動植物に気をつけなければならないのか?」と題して、 「重要種とはなにか?」、「 重要種を殺傷等したら罰せられるか?」をお話します。
ついで、「日高自動車道に関わる配慮すべき動植物」について、 「どういう種類が確認されているのか?」をお話します。
最後に、「工事におけるモニタリングとの連携について」 「植物重要種の生態と工事との関わり」、 「どういう保全対策の方法があるのか」、 「これまでに行われた対策」について、ご説明いたします。

PowerPoint PAGE-03

なぜ、動植物に気をつけなければならないのかについて、 そもそも重要種とは何かを説明します。
法令等のお話になるので、面白くないお話ですが、よろしくお願いします。
「環境影響評価法」では、重要種の規定はありません。
ただし、道路事業で環境影響評価を行う際の省令となる、 「道路事業に係る環境影響評価の項目並びに当該項目に係る調査、予測及び評価を合理的に行うための手法を選定するための指針、環境の保全のための措置に関する指針等を定める省令」には、 第7条に記載があります。
第7条  …環境影響評価の調査、予測及び評価の手法は、事業者が、次に掲げる事項を踏まえ、…選定するものとする。
二 …陸生及び水生の動植物に関し、生息種又は生育種及び植生の調査を通じて抽出される学術上又は希少性の観点から重要な種の分布状況、…を把握できること。
です。

PowerPoint PAGE-04

それでは、【学術上又は希少性の観点から重要な種】 とはなにかですが、
道路事業における環境影響評価の技術手法となる、
「道路環境影響評価の技術手法(平成24年度版)」に  解説が記載されています。
<法律等>であげると、
「文化財保護法」の「史跡名勝天然記念物」 「北海道文化財保護条例」の「道指定天然記念物」 「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」の 「国内希少野生動植物種、緊急指定種」 最近条例の名前が変わった「北海道生物の保全等に関する条例」の 「特定希少野生動植物、指定希少野生動植物」

です。

PowerPoint PAGE-05

また、<文献>では、
レッドデータブック(最新は、環境省2014年版)ですが、 絶滅危惧I類、絶滅危惧II類、準絶滅危惧、地域個体群、情報不足 地方版レッドデータブック(北海道レッドデータブック)の 絶滅危機種、絶滅危惧種、絶滅危急種、希少種、地域個体群、留意種 です。
では、重要種を殺傷等したら罰せられるのか? ですが、
<法律等>の指定種は、罰則規定があります。
<文献> の指定種は、罰則規定がありません。


PowerPoint PAGE-06

例えば、文化財保護法で指定されている天然記念物については、

PowerPoint PAGE-07

その現状を変更し、又はその保存に影響を及ぼす行為をしようとするときは、
文化庁長官の許可を受けなければならない。
とあり、

PowerPoint PAGE-08

滅失し、き損し、又は衰亡するに至らしめた者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は30万円以下の罰金に処する。
と定められています。

PowerPoint PAGE-09

また、許可を受けずに現状を変更したり、保存に影響を及ぼす行為をしたり、命令に従わなかった場合、
20万円以下の罰金に処されます。

PowerPoint PAGE-10

種の保存法で指定されている国内希少野生動植物種及び緊急指定種については、
捕獲、採取、殺傷又は損傷をした場合、

PowerPoint PAGE-11

1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する、とあります。
このように、法令による指定種は、特に留意しなければなりません。

PowerPoint PAGE-12

また、その他の注意事項として、 環境影響評価書について、お話します。
大規模な事業を実施する場合には、 法や条例に基づいて環境影響評価(アセスメント)を実施し、 「環境影響評価書」を作成しなければなりません。
アセスメントにおいて、事業の実施により、 重要種の生息・生育に影響を与えると予測された場合、 回避・低減(擁壁構造の採用、移動経路の確保等)や、 代償(移植、代替生育地の創出等)などの 環境保全措置(保全対策)を実施する必要があります。
環境影響評価書で保全対策することを約束した場合、 必ず実施しなければならない。

PowerPoint PAGE-13

本路線においては、 <高規格幹線道路日高自動車道(門別~厚賀間)環境影響評価書>として、環境影響評価が実施されています。
本アセス書は、平成8年7月に公告縦覧されています。 当時は環境影響評価法が施行されておらず、 閣議決定要綱に基づいてアセスメントが実施されました。
当時のアセスメントでは、 「動物」「植物」などの自然環境の保全に係る、 環境保全対策は「必要としていない」と結論づけられています。

PowerPoint PAGE-14

しかしながら、 平成11年度に「環境影響評価法」が全面施行され、 これらを契機とした、環境配慮の見直しに伴い、 平成13年度より、 環境調査(現地調査、保全計画、保全措置)が、 実施されています。

PowerPoint PAGE-15

最後に、レッドリストの見直しについてお話しします。
環境省のレッドリストは、原則5年で見直しされます。

そのため、
<アセス時は普通種でも、リスト改訂で重要種になる>ことがあります。
その場合、
 アセスの再実施や予測評価は必要ありませんが、
 アセス後に発生する許認可行為等では、
 改めて予測評価が必要な場合があります。

逆に、
<アセス時は重要種だったけど、リスト改訂で普通種になる>ということもあります。
この場合、
 一般的には、環境影響評価書で約束した場合、  保全対策を実施する必要がある。

PowerPoint PAGE-16

それでは、第1章のまとめです。
・重要種には、天然記念物や種の保存法の指定種のように、  法令で指定されたものと、  環境省や北海道のレッドリスト等のように、  法令で指定されていないものがあります。
・法令で指定された重要種を捕獲等した場合、  罰則規定があるものもありますが、  法令で指定されていないものについては、  罰則規定がありません。 ・この他、環境影響評価書で保全を約束した種については、  事業において、環境保全措置等を講じる必要があります。

PowerPoint PAGE-17

次に2番目にお話しする内容に移ります。
日高自動車道に関わる配慮すべき動植物についてです。
門別厚賀道路では、27科38種の植物重要種がこれまでに確認されています。
地域の特徴として、サクラソウが挙げられます。

PowerPoint PAGE-18

サクラソウは、 北海道(2001)レッドデータブックでは、「絶滅危急種」 環境省(2015)レッドデータブックでは、「準絶滅危惧」 に指定されています。 また、分布・生態の特徴ですが、 ・北海道から九州にかけて分布しますが、  限られた地域でしか自生していません。 ・道内の分布は日高地方だけだが、 生育地の規模としては国内最大と  いわれています。 ・生育地の多くが低地(丘陵地) のため、  開発の影響を受けやすく  盗掘対象にもなっています。

PowerPoint PAGE-19

なお、植物については、法律等指定種は確認されていません。
また、「絶滅危急種」や「希少種」等ランクに違いがありますが、 ランクに違いがあっても、すべて重要種に選定されます。

PowerPoint PAGE-20

まとめです。
門別厚賀道路では、これまでに38種の植物重要種が確認されています。
また、地域特性として、サクラソウが挙げられます。

PowerPoint PAGE-21

最後の章として、 工事におけるモニタリングとの連携についてお話します。
はじめに、植物重要種の生態と工事との関わりについてですが、 植物の一般的な生態として、
「芽生え・展葉」⇒「生長」⇒「開花」⇒「結実」⇒「休眠」 というサイクルをとります。
植物の種類によって、生態が異なるため、 それぞれの種にあった対応が必要です。

PowerPoint PAGE-22

保全対策として移植をする場合には、 「マーキング」と「移植」は、別々に実施が必要になります。
すなわち、 「生長、開花期」には、 種の識別はしやすいのですが、移植等は影響が大きい時期なので、 保全対象個体のマーキングの適期となります。
また、 「休眠期」には、 移植等しても影響はないですが、種の識別はできない時期ですので、 保全対象個体の移植の適期となります。

PowerPoint PAGE-23

以上から、 「マーキング」や「移植」は適期に実施する必要があり、 工事スケジュールの調整や立入りの確認に留意が必要です。
特に、 移植個体が膨大な数量で、 作業を施工業者が実施する場合には、 作業員の手配や移植指導等を実施する必要があります。

PowerPoint PAGE-24

次に、どういう保全対策の方法があるのかですが、 保全対策の方法には、「移植」、「播種」等があります。
<個体移植>とは、
多年生植物の個体を掘り取り、移植地で植えつける方法です。 種によっては、事前にマーキングが必要となります。

PowerPoint PAGE-25

マーキング、草本類の掘り取り、プランターへの仮置き、木本類の根切り等の段階があります。

PowerPoint PAGE-26

次に、<表土移植>ですが、
一年草や二年草の生育していた場所の表土をはぎ取り、 移植地で敷き均す方法です。
事前にマーキングが必要となります。

PowerPoint PAGE-27

マーキング、表土の掘り取り、表土の保管・運搬、表土の敷きならし、等の段階があります。

PowerPoint PAGE-28

最後に、
<播種>ですが、 あらかじめ種子を採取し、播種地で種を撒く方法です。
種子の採取、播種という作業になります。

PowerPoint PAGE-29

保全対策の方法は、植物重要種の生態で適した方法が異なります。
木本類は、年輪によって生長し、冬も地上部が残ります。
草本類(多年草)は、複数年生存する草本で、多くは冬に地上部がなくなります。
草本類(二年草)は、1年目に芽生えて生長し、2年目に花をつけて枯死します。
草本類(一年草)は、1年で、芽生えて結実して枯死します。

PowerPoint PAGE-30

種類と保全対策の適否は表のとおりです。

PowerPoint PAGE-31

最後に、 これまでに行われた対策についてです。
主な移植地は、道路敷地内で、今後の工事に影響のない場所を選定しています。
移植地の周囲は、スズランテープや虎ロープで囲い、 不用意に立ち入られないようにしている。
この範囲については、基本的に改変や立入りはせず、
必要な場合には、苫小牧道路事務所へご相談ください。

PowerPoint PAGE-32

まとめです。 それぞれの植物は生態が異なるので、それぞれの種にあった対応が必要。
保全対策として移植を実施する場合、開花期等に「マーキング」、休眠期に「移植」が適期です。
移植を実施する場合には、 工事スケジュールの調整、立入りの調整が必要です。
特に、大規模移植の場合、 施工業者による移植作業員の手配、 移植説明会の実施などが必要になる場合があります。

PowerPoint PAGE-33

保全対策の方法には、「個体移植」、「表土移植」、「播種」などがあります。
保全対策の方法は、植物重要種の生態 (木本類、多年草、二年草、一年草)によって、
適した方法がそれぞれ異なります。
計画路線周辺には、移植地があり、 虎ロープ等でマーキングしています。
移植地内へは、不必要に立ち入らず、 必要な場合には、道路事務所へ相談願います。
以上です、ご清聴ありがとうございました。